ひょんなことから大阪に行ったので北新地たゆたゆを堪能してきました
もう3週間程前の話になるのですが、飲食のことしかブログ書いてないですけど一応趣味でスピーカーオーディオやってまして、その知人が"引取限定のスピーカーをヤフオクで落札したから大阪まで引取に行こう!"と持ちかけてきました。
それもスピーカー4本で総重量は300Kg近いと、そんな面白そうなの乗るしかないわけです。で、その引取工程の中で大阪一泊を盛り込んだので以前よりお伺いしたかったお店に行ってきたていう話です。
スピーカーはまとめてVOXYに積んだんですが、運転席と助手席以外の空間全てをスピーカーが占めています。横から見ると後ろだけ車高短ですw
スピーカーがどんなものだったのかといった詳細は知人のブログで!
ここからが行ってきたお店の話です
お伺いしたお店はタイトルにもありますが、北新地たゆたゆさんです。やきとんのお店です。(やきとりではないです。豚です。)
https://instagram.com/kitashinchitayutayu_honten?igshid=YmMyMTA2M2Y=
学生時代に名古屋に住んでいたことがあり、名古屋だと「ねぎま」が鳥ではなく豚ということもあり、そういったやきとんは食べたことあったのですが、本格的なやきとんは初めてでした。
2人で行ったこともあって色々頼みましたがとりあえずの一品目は
もつ煮込み
白味噌と酒粕ベースで煮込まれていてビールが進みます!豚モツも臭み皆無でプリプリ、酒粕の深みのある味わいがほっこりしてほんと美味しかったです。
お次は串もの、おすすめ7串のセットにつくねとトントロ、芽キャベツをいただきました。
おすすめ7串 ① 左からガツ(胃)、ノドブエ(のど軟骨)
ガツはコリコリ感に溢れ出る甘く旨味たっぷりな脂が最高です。ノドブエはすごく獣臭がするんですけど嫌な感じじゃなくてコリコリ感と動物性の旨味が良かったです。
おすすめ7串 ② 左からバラ、ハツ(心臓)
バラは言わずもがなに美味いですね!ハツが鳥のものより血の香りが抑えめ、動物性の旨味が強かったように感じます。噛みごたえも程よくあって噛むほどにウェルバランスな血の風味ろ旨味が溢れ出て堪らなかったです。
おすすめ7串 ③ 左からハラミ(横隔膜)、タン(舌)、テッポー(直腸)
ハラミとテッポーがいただいた串の中だと群を抜いて美味しかったです。ハラミはこれ本当に豚なの?と思ってしまうほどの上質で深み,余韻共に兼ね備えた立体的な旨味が凝縮されて詰まっていました。一噛みする毎にこの旨味が溢れ出てきて、その美味しさに脳が悶え快楽を覚えるのです。テッポーは噛んだ瞬間はいい焼け目でサクッとしているかと思えば、その後グニュッとした締まりのある脂身を噛み締めるような食感がやってきます。その食感が非常に楽しいのですが、加えてくどさや粘性を感じさせないサラリとした、それでいて強い甘味を持った脂が滲み出て来ます。これがもう、食感と相まって美味しくて仕方がないのです。
つくね
トントロ
つくねとトントロはまぁ普通でした。他の串で期待値が上がりすぎていたのは否めないですがそれでもやっぱりわざわざ頼む程ではないのではないのかなと思います。
カラッと焼き上げられていてほんのり甘さが混ざった香ばしさが良かったです。けど、少しキャベツの水分が失われていてモサモサとした印象もありました。ただ焼くだけでなく蒸し焼きの工程が入っていると良かったのかななんて思いますが、ジューシーなやきとんの小休止としてこのカラッとしたもはいいのかもしれません。
串の他に焼き野菜を2品いただきました。
ジャンボマッシュルーム ※写真だと分かりにくいですが拳大ぐらいの巨大さです
淡路島産タマネギ丸焼き
この焼き野菜が2品ともとんでもなき美味しかったです。ジャンボマッシュルーム、タマネギ共々水分が後から注入されているんじゃないかと思う程にジューシーで、噛めば水分が溢れ出てくるとかそんなレベルでなく、箸を入れただけで溢れてきます。そして、どちらもそれぞれの野菜としての旨みが最高に凝縮されてその水分に詰まっています。おまけにどちらも甘く(特にタマネギは抜群の甘さでした)、飛びそうになる程の衝撃の美味しさでした。
ここまで色々頼みましたがお腹もちょうどいい頃合いかなてことで〆を。
バター醤油ご飯
これが罪深過ぎる美味しさでマジでヤバかったです…ご飯にバターと醤油かけただけのはずなのにもう美味しくて美味しくて、今この記事を書いている瞬間も食べたくて仕方が無いです。なんでこんなに美味しく感じるのかは全くもって分かりませんが、少なくともたゆたゆに行ったならばバター醤油ご飯はマストで頼むものでしょう。(これ、なんとか自宅で再現できないですかね、近々試してみたいものですw)
質の良い豚ホルモンを中心にしたやきとんほんと美味しかったです。ただ、心残りが少しあってお腹にはやっぱり限界があるもので、豚刺し食べたかったんですけど食べられなくて。そんな心残りもあるのでまた大阪行くことがあれば必ず再訪したいですね!
余談ですが、カウンターの席だと目の前で串が焼かれるのを眺めながら食事できます、こういうのなんだか楽しくなります。
兜町Hoppersでランチにモダンスリランカプレートを
数ヶ月前でしょうか、押上にあるモダンインド,スパイス料理の名店スパイスカフェさんが日本橋は兜町にモダンスリランカ料理をテーマにした姉妹店を出されると、スパイスカフェオーナーの伊藤一城さんのInstagramの投稿で知りました。
スパイスカフェは過去に2度お伺いしたことがあり、巧みなスパイスと旬の食材とのマリアージュが素晴らしく大好きなお店です。そんなお店の姉妹店なんて行くしかないと心に決めていたのですが、寒い時期はどうにも引き篭もりがちになったり忙しかったりで行けていなかったのでこのゴールデンウィークにお伺いしたしだいです。
ディナーコースでお伺いしたかったのですが、予約もしていなかったのでランチでお伺いしました。ランチだけのスリランカプレートも面白そうでしたし。
そんなスリランカプレートがこちらです。
ライスに9品の副菜、それに3種類から選べるカレーが1つ付きます。これで1650円なので個人的には安いなと思います。
カレーはエビ、フィッシュ、チキンの中からエビを選びました。"出汁が効いてる"てメニューの謳い文句に惹かれてしまいました。
ちなみに、カレーは+500円でもう1種類追加できます。
他に飲み物でクラフトコーラがあったのでそちらもいただきました。
プレートの方は彩鮮やかでサーブされた瞬間に思わず気分が上がっちゃいます。その上がった気分のまま一口食べると口内にスリランカ料理らしいココナッツ香るマイルドさとスパイスの心地よい風味が広がり思わず、"美味っ"て言葉が出ました。
エビカレーの方も想像の5倍ぐらいはエビ出汁が強く効いていて、エビ出汁の円熟みでトマトベースの角をとって調和させているようで、味のピークには強いエビの風味とトマトの甘さ,角の取れた酸味が織り混ざり最高に美味しかったです。後引く風味には臭みなんて皆無の心地よいエビの風味が残り、それを含んだままプレートをいただくのがまた楽しかったです。
クラフトコーラはスパイス料理店やカレー屋さんであったらだいたい頼むんですが、今までで一番美味しかったです。カルダモン単推し+柑橘みたいな味じゃなくて複雑なスパイスの掛け合いによる濁り感とミントの清涼感がウェルバランスで料理との相性も良かったです。ミントの清涼感が気持ちいのでこれからの暑い時期には是非頼まれてみてください。
ちなみに、飲み物だとサービスでお水が提供されるんですが、これがスパイスの香る白湯でほんと細かいところまで拘られているなと思わされました。
スパイスの風味の使い方なんかはスパイスカフェそのもので、スパイスの強い風味を瞬間的に一気に解き放つのではなく、抑え気味,もっと言うと暗部の見事な諧調表現で美しく描かれた絵画のようなダークトーンな風味です。これはスパイスでキマるというよりchillて感じなやつだと感じます。
しかし、何から何まで料理の印象がスパイスカフェと同じなのかと言うとそんなことはありません。スパイスカフェは味付けが雄大で少しの華やかさを持たせつつも味のピーク感はやや抑えめ、美味しさにどっぷりと浸かり呑まれていく、そして美しく上品な華やかさを放つ余韻に浸る、そんな印象です。対するHoppersはメリハリのある気持ち濃いめに味付けがされており、ダークトーンでchillなスパイスのベースにリズミカルな味が乗る印象で小気味よいです。こちらの方が美味しさにグッと脳が支配されて無我夢中で食べてしまうような感じです。
スパイスカフェとHoppersでは立地もコンセプトも違いますから、その辺りをうまく描き分けているんだと思います。見事ですし、こういうのプロの仕事て感じで凄いなと思わされます。
期待を遥かに上回る美味しさにお昼から気分が上がりながらも、スパイスで心が安らぐいい時間でした。次は必ずやディナーコースでお伺いしたいですね!
ちなみに、このHoppersの入っている建物はKABUTO ONEというビルの一階なんですが、他にも面白そうなレストランや施設が入っていて面白そうでした。最近兜町の魅力が高まっているように感じますが、また一つ魅力が高まっているように思います。
Hoppersのお向かいでは、和歌山で日本酒を醸造されている平和酒造さん(紀土を醸されているところです)が新たな試みとして手掛けられているどぶろく蔵を兼ねたコミュニケーションスペースの入る建物が改装中でした。こちらもオープンが楽しみですね。
食後、少し兜町をぶらぶらしていると以前から気になっているレストランのkabiがプロデュースする新店舗、cavemanが入っている建物を見つけましたがこちらも洒落ていますね。kabiもcavemanも行ってみたくて仕方ないです。
ぶらぶらしていると甘いものが食べたくなったので、チョコレートとジェラート専門店のtealでジェラートをいただきました。
フレーバーはピスタチオとタルトタタンにしました。
タルトタタンは正直普通でしたが、ピスタチオはめちゃうまでした。ピスタチオの濃さとフレッシュ感がいい感じです。中粗挽きで入っているピスタチオの舌触りも良かったです。
このtealは何回か訪問して一通りの種類のお菓子買っていますが正直このジェラートと、カカオという名のチョコレートケーキだけが価値ある美味しさだと思います。(ケーキは全種食べたことあるわけではないですが…)カカオは都内のチョコレートケーキでもトップクラスの美味しさです。
兜町は、他にもtealの姉妹店のeaseもあるので、ランチ後にteal or easeでデザートみたいな流れが出来るの良いですね。
この後、あまりに気持ちのいい天気だったのでフラフラと日本橋を経由して銀座まで歩きました。
coredo日本橋面白い形した建物ですね。こういうの都市的で個人的に好きです。特に日本橋はこうした建物と近代の建物が共存しているのが魅力的です。
銀座はコロナ禍どこ吹く風のような人出でした。GINZA SIX開業5周年なんですね、好きだったお店が最近よく消えていて悲しいです。
GINZA SIXの中腹部を抜ける通り道の雰囲気が好きだったりします。
東銀座まで歩いて帰路に着きました。地下鉄の出入口、明るく現代的な地上空間から少し古さを感じる薄暗い地下空間へ入っていくコントラストの変化がなんとなく好きです。
ランチいただいて、写真撮りながら街をぶらぶらと強い刺激があるわけではないですがリフレッシュできた一日でした。
ちなみに写真は下手の横好き程度ですが、"これでしか残せない空気がある"なんてくさいことを思ってカメラは分不相応な中判ミラーレスHasselblad X1DII 50Cを使っています。しかし、街中で使うと30mm広角がいっそう欲しくなってしまいますね。けど、いかんせんお高い...天から降ってこないですかねw
タルトフランベとアルザスワインをいただきに行ったら悶々とした話
2022ゴールデンウィークいかがお過ごしでしょうか?
私はどうせゴールデンウィークにどこか行っても混んでるでしょ…と思い、途中平日になっている月曜と金曜は特に休みも取っていませんでした。
そんな月曜日は三連休明けで翌日からはまた三連休、もう朝から今日はピンで上がって軽く飲んで帰ろうと意気込んでいました。
そんなわけで、どこに行こうかと考え、以前より行ってみたかったタルトフランベなるフランスはアルザス地方の郷土料理と、豊富なアルザスワインを売りにされている代官山のコテ・フーさんに行くことにしました。
以前からアルザスワインは仄かなクールさとお淑やかなフローラルな風味が良くて作り手を問わず好みと感じることが多かったのが以前から行きたかった故のような気がします。
今回は代官山からは電車一本ですぐに帰れるという気軽さもお店選びに手伝いましたがw
Facebookのメッセージから予約や席の空きが確認できるとのことで、会社のお昼休みに"18時ごろから行けますか?"と問い合わせると"席の用意大丈夫"とのことでもうワクワクしていました。
そんなワクワクを胸に代官山駅から10分程の道を心躍らせながら歩きお店に着きました。
お店の方はオーナー兼ソムリエの男性、その奥様(?)と思しき女性、助っ人のような男性の三人が店内を回されていました。
とりあえず一杯目は、以前に飲んでいたく美味しかった作り手であるLaurent Bannwarthのものがあればいいなぁなんてメニューを見るとゲヴェルツトラミネールがありました!!
しかも、以前飲んで美味しかったのも2019のゲヴェルツトラミネールだっただけにこれがまた飲めるとは、と幸先いいじゃんなんて思いつつ頼みました。
すると、女性の店員さんから"これはよくあるゲヴェルツトラミネールとは少し違いライチの香りはなく変わったものですが、いいですか?"と。
そんなだった記憶はないけどビンテージとか諸々の違いなのかなと思いながら頼み出てきたのがこれ。
Laurent Bannwarth Triptik
そう、これゲヴェルツトラミネールじゃないんです…メニューには確かにGewurtztraminer Natureと記載あったんですが。(Triptikボトルで市場売価7千程するのにグラスで1280だったので、仕入れ値が幾らかは分からないにせよ絶対に何かおかしいとは思いますが、ボラれてる訳でもないので特に何も言いませんでした。。。)
はい、この時点でタイトルから薄々勘付かれる方もいらっしゃるかもですが、これを始まりにこのお店ヤバくない?みたいなのが最後まで続きます()
それはそうと、このひょんなことから出てきたTriptikはかなり美味しかったです。
詳細は以下リンクの説明読んでいただくのがいいと思いますが、2017,18,19のビンテージのブレンドで、ブドウはリースリング, ピノ・グリ, ゲヴェルツトラミネールを使用したもののようです。
ローラン・バーンワルト / トリプティック NV | WANDERLUST WINESHOP
口に含んだ最初はふわりとした口内を撫でるような甘み、果実(特にアプリコットかな)を思わせる骨格はしっかりしており瑞々しくナチュラルな解像感を持った酸味、それらが合わさることで醸成されるソフトな質感を持ちつつも凝縮感もある甘酸っぱさが特徴的でした。特に、恐らくオレンジワイン(この作り手のゲヴェルツトラミネールはオレンジワインだったはずなのでそのブレンドであるならば遠からず近からずかと)に仕立てられていることから得られていると思われる、果皮を齧った時に感じるような抜けきらないくすみ感と共に感じる植物らしさが美味しかったです。くすみ感も、パッとしない"くすみ"にするのではなく、ブレンドから得られる味の飽和からくるギスギスした質感と合わさり複雑性へ昇華されているのは秀逸でした。熟成を行っているワインのようでしたが、この熟成はそんな複雑性を包容する味わいの大きさを作るためなんでしょうかね?ともあれ、個人的には根菜類に鴨の臓物なんかと合わせてみたいワインでした!
女性から説明されたゲヴェルツトラミネールとは変わっているというのはそれはそうだし、ゲヴェルツトラミネールも入ったブレンドだけど、ソムリエいるお店でこれはまぁ"えぇっ"てなりますよね…てか、ソムリエが責任もって説明してサーブしろよて話です。
で!!!ここからが衝撃なんですよね!
一杯目頼むのと併せて鯛のカルパッチョお願いしていたんですがこれが待てども暮らせども出てこないんですね!!
途中待つこと10分ぐらいでサービスなのかチャージなのかよく分からない空豆の窯焼きが出てきました。店内照明抑えめでブレてますけど、まぁ空豆が焼かれてるだけなんで。
で、そこからカルパッチョはどうしたん…?て思いながら空豆をチビチビ食べてたらついに1時間が経過するわけです。そう、1時間経ってもカルパッチョが出てこないんです()
空豆も尽きて一杯目のワインも尽きてカルパッチョもこないので、とりあえず二杯目のワインをいただくことにしました。
二杯目はリースリングが飲みたいなと、メニューを見ると2人の作り手のものが載っていました。どちらにしようか決められなかったので、"リースリングらしい白桃のような香りの麗しい方はどちらですか。"と女性の店員の方の訪ねると分からなかったようでオーナー兼ソムリエの方に振られました。
ここからがまたクソなんですよね…
オーナー兼ソムリエの方から返ってきた答えは
"2人とも師事した醸造家は同じだが片方は兄のような人柄でもう片方は弟のような人柄です、弟のようなのの方が遊び心があります"と。
確かにね、人柄が味に繋がるのは分かりますよ、けどさすがにこの答えじゃ分からんでしょ…わりと呆れて空いた口が塞がらなかったです。
まぁそんなこんなで結局は女性の方にとりあえずのリースリングならこっちかなと思います、と言われたものをなんだかモヤモヤしながらいただいたのがこちら。
Bott Geyl Alsace Riesling Jules Geyl 2019
メローな温もりを感じる甘さに、スモモを思わせる酸味、時折感じるフローラルさ
正直もっとクールで白桃を感じるリースリングが飲みたかっただけにこれは期待はずれすぎて残念…ソムリエの方の言うお茶目っていうのは温もりのことを指してたのかね
ソムリエの方がもっともっとまともなら避けられた選択だったような気がしてならないですね。
ところで、話をカルパッチョに戻しましょう。カルパッチョはまだ来ません!
しかも、そんな間にオーナー兼ソムリエの訳のわからない言動が繰り出されるのです。
・隣にいらっしゃった男女ペアの女性の方とワインのことを話して気に入ったのかワインを一杯サービスし始める
・常連の方と思われる3人組の席にしゃべりに行き、座り始めなんかよく分からない言葉をそれなりの声量で発し始める
別にこれでちゃんと料理がサーブされて、ワインの相談も乗っていただけているならお店の粋なサービスだったり、そういうスタイルなんだなと思えたりするんですけど、基本的なことが出来てないのにこれは本当に意味がわからなかったですね。
しかも、その間料理のサーブに滅茶苦茶に時間がかかっていることを、女性の店員の方は物凄く丁寧に謝ってこられ、少しでも気分良くしてもらおうとお店を回す中の出来る限りで気遣いをされるわけです。なのに、オーナー兼ソムリエの方といえば時折りヘラヘラした笑いを浮かべながらすいませんと言うだけで、しかも挙句の果てには女性の方へお前も謝れと言い出すのです。女性の方が本当に気の毒でなりませんでした。
オーナー兼ソムリエはほぼ何もしないどころか仕事を増やして、女性の方と助っ人の方でお店をなんとか回している状態でした。ほんと何この店…
そして時間は流れ1時間と20分程が経過したところで突如タルトフランベがサーブされました。サーブしていただいた女性に"カルパッチョは飛んだのですか?"と聞くとオーナー兼ソムリエに確認が入り"注文は入っているがまだ作っていない"とのこと。暖かいものがサーブされてから冷たいカルパッチョをいただくなんて興醒めもいいところなのでもうキャンセルにしていただきました、申し訳ないですが。
そんなこんなでいただいたタルトフランベはタマネギとベーコンのもの。
アルザスではこれがタルトフランベの定番だそう。
これはそこそこ美味しかったです。生地から溢れる火の通ったオリーブオイルの香りが良く、ベーコンもしっかりと燻された風味がありました。生地のサクサク感も良かったです。けど、今ひとつ異国情緒の漂う味わいはなく、その点は期待しすぎだったかもしれません。
先のリースリングと一緒にいただくと、オイリーさを酸味ですっきりさせ、フローラルさがオリーブやタマネギの香りと反応して美味しかったです。憎いですが、ウォームなテイストもタマネギや生地から引き出された甘さと合っていました。
もっと15分とかでサクッとこのタルトフランベがサーブされてリースリングと一杯やれていたらどんなに楽しかっただろうかと思わされてならなかったです。
最後を締めくくるのはこれでした。
フランス産ホワイトアスパラガスの釜焼き
これでフードが最後て衝撃ですし、欲を言えばもっと色々食べたかったですが、ここから追加したら日が回る前に帰れるかすら怪しそうだったのでやめました。
そんなアスパラガスに折角だから最後にワインを一杯合わせていただこうと女性の店員の方にそれほど大きな期待はせずにワインを合わせてくださいとお願いし、いただいたのがこれです。
Laurent Barth Muscat D'Alsace
結論から言うと、このホワイトアスパラガスとミュスカの組み合わせが凄まじく良かったです。正直この組み合わせをいただいている瞬間だけはただただ脳内が幸せで満たされてこれまでのイライラを忘れられました。
ホワイトアスパラガスがそれはそれは甘くジューシーで、そんな甘さにこのミュスカの持つ干し葡萄が放つような花の蜜をも思わせる凝縮された甘さ、しかし焦げるような熱さまでは感じさせず飽くまでもクールさをギリギリに逸さない、凄まじく完成度の高い甘さが恐ろしくマッチしていました。
ただ、それだけではどうしても甘さが先行し過ぎてしまい、アスパラガスの持つ青く植物らしい面がやもすれば消えてしまうところを、ミュスカの持つやや強めのミネラル感で合わせにいっていました。しかも、そのミネラル感はアスパラガスだけではジューシーさでかき消されそうになるところを、アスパラガスに振りかけた粗挽きのお塩でミネラル感を引っ張り上げるといった奇跡的な相性の良さでした。アスパラガスもミュスカもお塩も全てがどの要素も捨てられることなく調和していたと思います。
そして、やはり思うのです。これがサクッと味わえたならどんなに幸せかと…
なんとか程よく幸せになれたので、そろそろお会計しようと店員さんに声をかけるタイミングを見計らっていたところ、あのオーナー兼ソムリエがまたしても愚行に出ました。
隣にいらっしゃった男性2人組のお客さんの前に立って、"お待たせしてしまってすいません、でも大変なのは私の方なんです、コロナ禍に2年間で人と話す機会がほとんどなくなってしまい自分がおかしくなっちゃったんです。それで今は何も出来ないんです。けど、頑張ってお店再開したんです。"と、プロ意識のかけらもない謎すぎる弁解をしていました。
こんなの聞いても、"いやいやいや何も出来ないなら開店延ばしなさいよ、やるからにはプロとしての自覚を持ってよ"、としか思えないですけどね。
とまぁそんなこんなで2時間滞在して空豆4つ、ピザみたいなの1枚、アスパラガス1本だけ食べてお店を後にしました。
お腹なんて膨れる訳ないので、カップヌードル買って帰りました。
お湯を注いで3分でこの美味しさ、素晴らしいなとひとしきり。
ワインのラインナップにクオリティはアルザスのみで揃えているディープさと相まってよかったし、食事も味そのものは良かったと思います。ワインとの相性も良かったですし。
けど、あまりの接客のレベルの低さというか論外なレベルなのはほんとに腹立たしいです。
それさえ良ければサッと軽く食べてワイン1,2杯飲んで帰るみたいな軽い使い方で通いたいのに。心底残念でならないです。
いつかまともなお店になることを願ってこの記事は終わりとします。
アメリカ式BBQをいただきにフリーマン食堂を訪問
少し前にたまたまInstagramを見ていたところ、カンテサンスの岸田シェフがアメリカ式のBBQが食べたくてフリーマン食堂へ伺ったところ、大変美味しかったといった旨の投稿をされていました。
私自身、以前にディスカバリーチャンネルか何かでアメリカで行われるBBQ大会の出場者に密着するといった番組を観たことがありました。その中で彼らはBBQへの強い執念とプライド、誇りについて熱く語っており、彼ら一人一人オリジナルの香辛料や調味料で味付けを行い、数時間から一晩をかけて(※1)焼いていました。それを観て私はアメリカにおけるBBQというのは彼らアメリカ人にとってのカルチャーとも言えるものなのではないかと感じました。
(※1 100度〜120度といった低温で時間をかけて燻し焼き上げるのがアメリカ式BBQだそうで"Low & Slow"なんて呼ばれるみたいですね。それにより香り高くジューシーでホロホロなお肉になるそう。アメリカ式BBQについては下記が詳しくて面白かったです。)
https://www.americanmeat.jp/trd/publications/book/pdf/bbq_guide_book.pdf
そんなこともあって、アメリカ式のBBQに強い興味があったのもあり美味しいアメリカ式のBBQがいただけるお店があると知るともはや行く以外の選択肢はなく、行きたくて行きたくて堪らず、春の陽気も気持ちいい日に友人3人と行ってきました。
さて、そんなフリーマン食堂は幡ヶ谷にあります。
幡ヶ谷駅を出て3分ほど行った西原商店街の中でした。
あまり店内の写真を撮るのは好きじゃないので撮っていませんが、店内も同じような素敵な雰囲気です。
Technics SL1200でアナログレコードがBGMでかけられていて、スピーカーがJBLなのもあってかBGMも雰囲気あって良かったです。
12時開店のところ13時前ぐらいにお伺いしたのですが、満席とのことで席が空き次第電話いただけるとのことでそこから40分ほど幡ヶ谷の周りをぶらぶらしたり公園のようなところで散っていく桜なんかを眺めて時間を潰しました。
にしても桜というのは散ってもなお美しいものですね。
席が空きお店に入りましたが、まずはやはりビール!
春の陽気の気持ちいい日にお昼から飲むのは至福のかぎり
ビールは業務用冷蔵庫があり、そこに並べられているものを自由に取っていくスタイルでしたが、10種類以上のクラフトビールがラインナップされていてビール好きとしてはテンション上がりました。どんな味やスタイルかを店員さんに聞いてもしっかり教えていただけて、選ぶ楽しさあって良かったです。
私は手前の金色の水玉なラベルの
Stillwater New Gold
なるゴールデンエールを選びました。
エールらしい深いコクと藁を思わせるモルトの味わいをホップの爽やかな香りを軽く漂わせることで深みはありながらもドリンカブルでモダンな味わいでめちゃ美味でした。
3人で行ったので食事の方は色々頼めましたし、岸田さんが投稿されていてそれはそれは美味しそうだった目当てのパストラミビーフサンドとスペアリブも頼めました。
豚バラのBBQ
ホロホロになるまでは仕上げられておらず、適度にかみごたえがありながらも超ジューシーな仕上がりでした。(とはいえ、めちゃくちゃ柔らかい)
豚バラてどうしても脂身の感触があるものだと思うんですが、長時間のスモークで脂が落ちているのかそんな感触もクドさもなくメチャクチャに美味しかったです。
かかっているBBQソースも超美味しくて、お肉に擦り込まれている香辛料との相乗的な美味しさの反応がヤバいです。
パストラミビーフサンド
これはヤバかったです、異次元の美味しさなんじゃないかて程で
見た目ではかなりジャンキーな味わいそうに見えるんですが、それが食べると肉の強い旨味に辛すぎないけどくせになる程度の塩味、そこにしっかりとしたスモーキーさに時折香るブラックペッパーで綺麗に味がまとめ上げられており上品なジャンクに仕上がっていました。ホロホロ感やジューシーさも素晴らしくてコンビーフの超上位互換のような味わいです。思い返すだけでヨダレが溢れてきて食べたくなりますw
マスタードは酸味を効かせつつ刺激もやや強めで、パストラミの味の強さを先行しすぎるのをうまく抑え込み、一体感を生み出し美味しさをより味わいやすくしているように感じました。
バンズも一見普通に見えますが、あえて強い味を持たせずに、でも適度に爽やかさを演出するために小麦の香りはあるというもので、パストラミとマスタードとバンズを一緒に頬張った時の味わいは、更なる一体感が醸成されておりサンドとしての完成度も非常に高かったです。
スペアリブ
これもヤバかったです、美味しさ(旨味)のピーク感では豚か牛かの差があるのでパストラミビーフに軍配が上がるんですが、まさに食べたかったアメリカ式BBQの真骨頂のようなものをいただけて感動しました...
"肉を振るとプルプルとしている、肉は紙のように割くことができ、少し齧りつくだけで骨から簡単に肉が外れる、しかし振っても骨から肉が外れることはない"
これが抑えられた、素人目には完璧としか思えない肉の柔らかさにジューシーさに脂の落ち方でした。
香辛料も辛い刺激から香り高い爽やかさまで複雑な香味全てが肉と調和しており、パストラミビーフが即物的な旨味とすると、こちらはその対局にくる深みのあるものであり、これはアメリカ人が矜持を抱いて然るべきものであり、抱くには充分過ぎるものだと思いました。料理における味わいとしては即物的な旨味に位置づけられるものなのでしょうが、そうとは思わせない料理の深みがあるのは本当に凄いと思います。
まさに、アメリカのカルチャーの一つを食べるということを介して体験できているようで、物凄い美味しさ,旨さと相まって感動でした。
そして、同時にこういった類の味わいを突き詰めカルチャーとしてしまえるのはアメリカ故であり、経済というダイナミックなところにおいてはアメリカには勝てることはないのだろう、と食という一見縁もないようなところを介してアメリカのGreatさを感じてしまいました。
ブロッコリーの炒めとプルドポーク
ここまでガッツリ目の肉が続いたところでこのブロッコリーの炒めは箸休め(?)的で良かったです。
バターの風味をしっかりと効かせて炒められていました。
プルドポークはやはりジューシーでパサつきは皆無、旨味も強く美味しいですが、プルドになっているので香辛料の刺激が淡くなるのは避けられないところなのでソースがあれば良かったかなと思います。
正直ここまでの肉に対する複雑なアプローチを見るとこのお皿は肩透かし感があるのは否めないです。ブロッコリーの炒めの上に折角プルドポークが載っているのにその二者をうまく繋ぐ調味料や、それぞれで持ちうる味わいも無かったですし。合っていないわけではないんですが、もっとこの二者のフュージョンが観てみたいと思わされるわけです。何かソースで繋ぐことができればプルドポークの香辛料の淡さもカバーできそうですし。
しかし、付け合わせはただの付け合わせであり、付け合わせには技巧をあまり凝らさないのがリアルのアメリカの食文化なのだとすれば、なんとなくですが納得のいくところではあります。そうであるのであれば、これもまた何にも染められていないアメリカの食文化を味わっているということであり、その点に面白さは感じます。
スモークドブリスケットの煮込み
見た目はトマト煮込みのように見えますが食べた印象では、これは間違いなくガンボだと思います。
セロリ、タマネギの香味が効いていてどこかアーシーな風味もあり、まさに郷土料理といったいい意味で華のない落ち着いた素朴な味で美味しかったです。素朴ではありますがしっかりコクも深みもありました、この辺りはスモークドブリスケットの風味がいい仕事をしているんだと思います。
以前、とあるハンバーガショップでガンボをいただいたことあるんですがそれはアーシーさなんかはなくて香味もそれ程、良く言えばモダン、悪く言えば奥行きに欠き薄い、まぁパッとしない印象でした。
それが、今回いただいて郷土料理的な美味しさを味わえて、ガンボてこんな味でホッとする美味しさなんだとリアルと思われる食文化を体験できているようで楽しく美味しかったです。
これは、次お伺いすることがあればもう少し最初の方で頼んでしっかり味わいたいですね。
ざっといただいたものと感想でした。
BBQは物凄く美味しいですし、アメリカのリアルな食文化に触れられるという意味でもいいレストランだと思います。
私が案内されたテーブルはその前までアメリカ人の方が誕生パーティされてたそうで、そういうことができるし、店主の方はアメリカ人の方ですがとてもフレンドリーで周辺に愛されているレストランなのかなと思えて微笑ましかったです。
手間ひまかかっていそうだし、ボリュームもかなりあるのに三人で飲み食いして6000円/人だったのでコスパも凄いと思います。正直この美味しさでこの値段は安いでしょと思っちゃいますw
ワクワクできるし美味しいしでお肉好きだったりアメリカ式BBQに少しでも興味が湧いたりしたならぜひ行かれてみてほしいです。
Salmon&Trout 2月猪鍋コースの訪問
三軒茶屋と下北沢を結ぶ茶沢通りの中間あたりの代沢にお店を構えられているレストランSalmon&Troutさんへ先週末お伺いしました。
お伺いするのはこれでもう5度目なのですが、最後が昨年の2月で丁度1年ぶりでした。
今回はメインが猪鍋で、その昨年2月の際も猪鍋でそれが大層美味しかったので今回お伺いした次第です。
まず、軽くどんなレストランなのか説明しておきます。
HP : http://salmonandtrout.tokyo/
ジャンルとしてはイノベーティブフュージョンに属するものなのかなと思っています。
ただ、複雑な料理技法を用いるのではなく、煮る,焼く,和える,揚げるといったシンプルな技法を用い、ジャンルに捉われない食材や香りの重ね合わせをされることで中村拓登シェフの世界がお皿に表現されていると感じます。
そうしたお皿を月替わりのコースにアルコール/ノンアルコールペアリングがなされる形で提供されています。
ペアリングをなされるのはオーナーでありカヴィストである柿崎至恩さんなのですが、そのペアリングに使用されるお酒の奥深さと料理とのペアリングの妙が素晴らしいです。
(私は頼んだことないですがノンアルコールペアリングの場合はティーペアリングのようです)
さて、いただいたお皿とお酒についてです。
構成としては最初に4皿、その後猪鍋と鍋の〆、最後に甘味1皿でした。
ペアリングについてはアルコールペアリングでお願いしました。
1皿目 牛蒡 白金時豆 長芋 蕗の薹 ベスン粉 / Erioli Malvezza 2018
牛蒡の鮮度の高い土っぽさを思わせるくすみ感があるコクを、豆の円やかさで伸ばしたペーストは淡いながらも褪せない味わいで口に運ぶと整うようでほっこりします。
蕗の薹のほろ苦さ、鼻に抜けるほのかに刺激的な香気成分...春を感じるこの味わいには心躍るものがあります。
(昨年も蕗の薹出てき、その際はお店のすぐ近くで採れたものだったそうなんですが今年のはどうだったんでしょうねw)
そんな蕗の薹の風味も天ぷらとなることで淡さが生まれ、ペーストと合わせた時には優しい土っぽさに淡い青さが描かれ、寒さを感じながらも春が見えてきどこか高揚してくる世界のようなものを感じました。
そんな、淡い一皿に合わされた白ワインのErioli Malvezzaは土着品種で醸造されたボローニャのものだそう。
強く太い酸味とタンニンは淡さに″刺してくる″ような印象でした。
淡さが間伸びしすぎずリズミカルさが付与されるようで良かったです。
2皿目 国産ジャスミンライス 干柿 ターメリック 八朔 鯉 キャベツ 梅干し / Brekeriet Low & Slow
このお皿はマジでヤバかったです。
一口一口を運び食べるのが楽しくて仕方のない一皿でした。
ジャスミンライス(国産のものがあるの衝撃でした)の芳香、茹でた鯉の泥っぽさに脂の甘さと深み(冬が鯉の旬だそうで、寒鯉は季語でもあるそう)、八朔の瑞々しい酸味、この時期のキャベツの甘さと土っぽさ、干柿のねっとりとした甘さ、ターメリックの華やかさ
食べ合わせにより切り取られる味の側面が変わり、万華鏡のように様々な味わいの世界を見せてくれる...そして時折奇跡なのか作為なのか恐ろしいほどに美味しい組み合わせが現れるのです。
総じてはアーシーさと優しい甘さが春を感じさせるも、華やかさも時折ありで1皿目よりもより春が近づき陽の光も春のものになったのを感じさせられるものでした。
合わされたBrekeriet Low & Slowはビールでしたが、これが自然酵母のみを使った醸造に加え1.6%の超低アルコールというあまりに深いものでした。
自然酵母のみ故かくすんだ花のような香りにグレープフルーツも思わせ個人的にはオレンジワインに似た質感と風味を感じました。
にしても、アルコールの重さのないビールのあらわになったホップとモルトの風味と味わいは衝撃でした。上記のグレープフルーツはあらわになったシトラホップの香りですかね。
3皿目 リーキ ティムット山椒 太白胡麻油 / ナチュラル・ココレラ・カント2019
ティムット山椒なるものが所謂山椒らしい痺れる刺激が僅かしかなく、代わりにフローラルな香りが口一杯に広がるという大変不思議で面白いものでした。
リーキのトロッとした甘さと繊維を噛んでほぐす間に広がるティムット山椒の香りが織り混ざり良かったですが、これはペアリングのワインと合わせた時にこのコースにおける在り方が完成するものがあるような印象も受けました。
そんなワインはナチュラル・ココレラ・カントで北海道のものでした。
甲州,マスカット・ベリーAに次いで3番目に国際品種に登録された山幸を使用したものだそう。そんな山幸は北海道で開発された品種だそうですね。
この味わいがかなりワイルドでスパイシー、でも決して荒削りではなくオリエンタルな雰囲気すらも感じさせるというものでティムット山椒の香りが口に広がって飲むと素晴らしく美味しかったです。
ここまで春を感じさせるお皿が来ていた中でのこのオリエンタルで刺激的な味わいはフックのように効いていました。
4皿目 鯉卵 春野菜 ミント ポン酢 リンゴ / Pivnica Cajkov Vulcanica #5
こちらも2皿目と同じようにアーシーさ+何かで春を表現されているように感じました。
その何かがこのお皿の場合はミント、ポン酢、リンゴの爽やかさのように思います。
ポン酢が喜界島の花良治ミカンから作られたものだそうで、爽やかさのレベリングが他と取られていたのも爽やかさがキーとして感じやすく一体感があり美味しかったです。
アーシーさを感じたのは鯉卵で、これが塩漬けにして日本酒につけたものを半乾燥させたものでした。鯉の身と変わらない淡水魚らしい土っぽさしっかりとありました。半乾燥のねっとりとしたテクスチャがあるのも土っぽさを高めていたように思います。
(この鯉卵、2皿目の鯉の卵だそうで食の追求とサステナビリティの両立に感動させられました)
合わせられたワインの方なんですけど、飲んで一週間経った故か記憶があまりなく...申し訳ないです。
なんとなぁく柑橘系の風味があったことは覚えているんですが。
メイン 猪&熊鍋(猪 ヒグマ 下山千歳白菜 猪肉漬け 四物湯)/ Phezant′s Tears Poliphonia 2020 / Johannesburg Zillinger Numen
〆 ビーフン / Ganstaller Brau Helles Lager
お鍋の前半と後半、〆でペアリングが変わる形でした。
お出汁が鰹なのは昨年と変わらず、昨年はみぞれ鍋だったのが今年は違いました。
昨年よりも鰹の風味が抑え気味かつ、四物湯の香りも抑え気味で風味の複雑性を排しシンプルにすることで素材の味の深さに目を向けるというようなものに感じました。
猪肉は全くの臭みがなく、甘く濃い脂みは豚肉よりも濃く美味しかったです。
熊肉はシェフの奥様が北海道で獲られたものだというからダイナミックなレストランだなと衝撃ですw
そんな熊肉は人生で初めて食べるはずなんですが、鹿肉のような味わいでした。
これはこのヒグマを獲らえるのに罠を使用したそうなんですが、その餌に鹿肉を使ったそうでその影響が大きいのかもしれないとシェフ談でした。
下山千歳白菜はお店近くの地場野菜だそうで、漬けて発酵させたものでこれは昨年と同じでした。この白菜そのものの旨味や土っぽさが美味しくて、これが強く感じられたのは昨年との違いだと思います。
昨年より素材一つ一つに目が向くようになったことから鍋としての纏め込みは浅くなっているように感じたのですが、そのおかげでワインと合わさった時に完成するというか味が纏め込まれる印象が強く結果的にお酒と合わせてめちゃくちゃ美味しかったです。
そんなワインのうち鍋の前半で合わせたPhezant′s Tears Poliphoniaは184種類?だったかなという途方もない種類のブドウを使って醸造されたものだそうで。
まぁ味わいは超ギスギスしてるし、渋みや酸味は幾重にも重なった恐ろしいほどの深みを見せるしであまりに複雑な味わいでしたw
単体で飲むにはしんどかったのですが、これが動物性の旨味がまだ出ていない鍋の前半に合わせると鍋の奥行きの浅さに深みが嵌まり込み、一気に複雑だけど纏まった味になって衝撃でした。このペアリングできるのほんと凄すぎです。
後半合わせたのはJohannesburg Zillinger Numenで超綺麗で美味しいリースリングでした。
白桃, シナモンシュガー, グリスを思わせるペトロールの香りと綺麗なところにうまぁくマシナリーな味わいの入った最高に私好みのものでした。今まで飲んだリースリングで一番好みでしたね。
動物性の旨味や脂が溶け込んだ後半の鍋とは、白桃の風味がすっきりとさせながらもエーテルの香りが脂の香りと相乗的に効いて多層的になったところにシナモンのパンチとこのペアリングもまた凄すぎでした。
にしても、たまにワインで見られる機械油やグリスのようなこのマシナリーでオイリーな香りて何由来なんでしょうね?
蒸留酒だとフーゼル油なのかなと思うのですが、ワインでそんなことはないでしょうし好きな味わいだけに気になりますね〜
〆のビーフンはまぁ白菜に猪、熊の旨味が溶け込んだ鰹出汁でいただくのですから美味しいに決まってます。ビーフンというお汁との絡みがいいものなのがまた、仕上がったお汁の旨味を堪能できて良かったです。
そんな〆に合わされたのがHelles Lagerなるラガービールでこれが超絶美味しい...
あまりのバランスの良い美味しさの只々美味しいしか感じませんでしたw
甘味 麩 豆腐 花良治みかん レタス アブサン / 茉莉銀針 水出し
この甘味も半端なく美味しかったです。
白色の豆腐のペーストにアブサンを加えているそうなんですが、これがいい感じにアブサンのドギツイ強さを丸くしてくれていました。
ニガヨモギの独特の刺激的な風味と青さが緑色のレタスのペーストの青さと合わさった時の風味の多層性と揺らぎが凄まじく美味しかったです。
喜界島の黒糖を染み込ませたという麩にそれらを合わせていただくと、甘さという味の基底のようなものが生まれまた一層の深みが出てき、味と風味の変遷が口内で生まれ心躍る美味しさでした。
ここまで風味の良い甘味に白茶で作られたという茉莉はさらなる風味の変化を与えてくれるもので美味しかったです。
特に白茶ベースということもあってか、藁のような草っぽさが感じられるのが相性良かったと感じます。
久しぶりのSalmon&Troutでしたが、こんなに一皿一皿を通して世界観、それも決して他のレストランやシェフでは醸成できないものを魅せてもらえるのは本当に楽しくワクワクする体験です。
特に今回は季節の変わり目ということでそうした四季を感じさせてくれお皿が多く、こうして四季が表現される料理というのはほんとに良いものだなと思わされた次第です。
素晴らしい体験に美味しい時間をありがとうございました。
なんだか、前回から一年も空けてしまったことが悔やまれたので今年はまた季節を変えてお伺いしなければなと思っていますw
PS.あまりに美味しかったラガービール美味しすぎてどこで買えるのか柿崎さんに教えていただき買いに行きましたw(追加で買いに行くが私の分は残しておいていただけると言っていただいた通り残っていて多謝です)
また、飲んだ時に気が向けばレビューしようと思います。